part 1. 時差

電話が鳴って、受話器に飛びついたら、聞こえてきたのはルイーズの声。シドニー在住の、ポールの妹。「元気?」「うん、まあまあ…」の挨拶の後、「ポールはいる?」
ポールの誕生日に、必ず電話してくれるルイーズ。
この日、昼過ぎに仕事から帰ったポールは、また夜勤に備えて睡眠中。バースデーなのに、一番しんどいシフトの日に当たっちゃいました。
ルイーズも、ポールの仕事の時間の不規則さは知っているので、
「何時に電話すれば、話せる?」
「え〜とね、夕食の時間に起きるから、7時頃がいいかな。NZ時間のね」
「わかった。NZとシドニーは2時間違いね。じゃあ、その頃、またかけるね」
ポールにそれを伝えたけど、ルイーズからの電話は来ません。
「この時間は、彼女も忙しいんだよ」
ポールが仕事に出かけた11:00pm過ぎ。リリーン!
こんな時間に誰?……と受話器を取ったら、ルイーズでした。
「惜しいっ! さっき出かけちゃったよ」
「え〜? NZとの差が2時間でしょ……。」
「う〜ん、だから、NZの7PMはシドニーの5PM」
「あ〜! プラス2時間じゃなくて、NZから2時間マイナスね。」
ルイーズ、ルイーズ……オーストラリアに何十年暮らしてるのに、それでも、やっぱり時差の計算、間違うんだ〜!?
結局、次の日の午後に首尾よく時間を合わせて、兄妹の会話タイムできました。
めでたし……めでたし……